『病児・病後児保育における保育士・看護師等のためのハンドブック』を知っていますか?
私は今、病後児保育の保育園看護師をしています。
最初は病後児保育って何なのか、子どもとどう関わったらいいのかもわからない状態でした。
ちょっと長い名前ですが、病児・病後児保育の概要や病気の子どもへの対応が凝縮した内容です。
私は保育園で働くのも、(新生児以外の)子どもと関わるのも初めてだったので、とても勉強になる内容でした。
病児・病後児保育に興味がある方や、子どもの体調不良に関わる保育所の保育士・看護師の方には知っていていただきたいです。
今回は、全56pのこのハンドブックの内容をまとめて説明します!
病児・病後児保育における保育士・看護師等のためのハンドブックとは?
「病児・病後児保育の実態把握と質向上に関する研究」班による全国調査で、保育士・看護師等に十分な研修がなされていない現状があることがわかりました。
病児・病後児保育において、
保育士は「小児の感染症や病態に関する知識を習得した上で、個々の状態に合わせた保育の実践」
看護師または保健師は「医療機関での看護とは異なる小児の発達心理等をふまえた専門性」
が求められます。
そのための研修が全国で実施可能になるために作成されたのが、このハンドブックです。
病気になった子どもの心理や、体調不良になった園児への対応なども書かれています。
そのため、病児・病後児保育に関わるスタッフはもちろん、保育所の保育士・看護師等にも役立つ内容です。
総論
ここからは、ハンドブックの内容から私が大事だなと感じたところをまとめていきます!
病児保育事業内容
病児保育事業には「病児・病後児保育」と「体調不良児保育」があり、地域の子育て支援の取り組みのひとつになっています。
子どもの病気の際および回復期で、親が休めない時に、保育士・看護師等が保護者に代わって子どもの状態に合わせた適切な保育・看護を行う場所が病児・病後児保育施設です。
と説明されています。
また、私の保育園でも体調不良児保育をしていますが、保育園で過ごしていて発熱した時などに保護者の迎えが来るまで看護師が対応しています。
子どもの体調不良は珍しいことではないため、保育所と医療機関、病児・病後児保育施設の連携が大切だと書かれていました。
働くまでは正直「病後児保育=子育て支援」ってピンとこなかったんです。
でも、自分も実際子育てしてみて、子どもを看護師に見てもらえて、安心して働ける環境ってすごく心強い存在だなと感じました。
保護者の方からも、「いつ子どもが具合悪くて保育園から電話来るか…。」と病み上がりにドキドキしながら働くよりも、病児・病後児保育に預けた方が安心できるという話もよく聞きます。
病児・病後児保育における保育士・看護師等研修
各地域で、1~2日(合計8時間程度の内容)の基礎研修が企画されることが望ましい、と書かれています。
その研修内容が、このハンドブックの内容です!
私の地域では研修がなく受講できてないですが、この内容をしっかり理解できれば基礎知識がつくのかなと感じています。
各論
病児・病後児の発達・心理を理解したうえでの遊び
子どもは病気の中にあっても日々発達していて、子どもは遊びを通して発達しています。
そのため、病気だから寝ていればいいというのではなく、症状や発達段階を踏まえた関わりが必要になります。
ハンドブックには0~5歳児までの「子どもの姿」と「子どもへの接し方」がまとめられています。
また、病気の子どもの心理としては…
- 病気による痛み・辛さなどによる耐性の弱さ
- 病気からくる不安感
- 病気になったことから起こる自信喪失
- 病気になったのは自分が悪いという罪悪感
があるのだそうです。
我慢する力が弱くなっていらいらしたり、自分に目を向け、手をかけてほしいという思いが強くなります。
病児保育事業で、子どもの保育などを行う場合には、病気であることの心細さに加え、馴染みのない人や場所という要素も加わります。子どもは安心することで、病気の状態が安定したり、病気回復への気持ちを強く持つことにも繋がります。
子どもに「安心感を与える」ことがすごく大切ということですね。
安心感のためには…
- 子どもの年齢に合わせた病気の説明や、ケアする場合に予測が持てるように一つ一つ説明する。(絵本の活用など)
- 子どもに穏やかで優しく温かい対応を心がけ、保護者とも笑顔で応対する。
- 保育所のような壁面装飾などを取り入れる。
というのが大切です。
(私の保育園でも装飾など頑張っています!)
また、子どもが安静を保ちながらできる遊びの具体例も紹介されています。
例えば…
乳児でベッド上安静なら「ガラガラ等の遊び」
室内安静なら「抱っこで室内散歩」や「窓から外を眺める」
室内保育なら「ハイハイ等で追いかけ遊び」
といった形です。(実際はそれぞれ3〜8個ずつ紹介されています。)
子どもの年齢と安静のレベルを考慮して遊びを考える必要があるので、困った時は参考になると思います。
病児・病後児保育を利用する子どもの主な症状と対応
ここでは発熱、咳嗽、下痢、嘔吐の4つの症状についてまとめられています。
なぜ起こるのか?どんな時に起こりやすいのか?ということや、
対応・ケア、観察・注意点についてもわかりやすく書かれているので、勉強になります。
この項目は中身が濃いので、詳しくはまた別な記事で紹介します。
薬に関する知識
薬の種類は様々です。
散薬、顆粒薬、シロップ薬…など種類別の特徴と、与え方について書かれています。
散薬・顆粒薬は、乳児は少量の水でだんご状にして飲ませる、幼児は少量の水で溶きスプーンで飲ませる…など具体的に説明されています。
坐薬、貼付薬、吸入薬などの項目もあり、勉強になります。
リスクマネジメント
ここでは、以下の6つのことについて説明されています。
- アレルギー
- アナフィラキシー
- 熱性けいれん
- 乳幼児突然死症候群(SIDS)
- 環境整備と緊急時体制
- 子どもの一次救命処置法
どれもとても大事な内容です。
「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」、「乳幼児突然死症候群診断ガイドライン」、「日本救急医療財団JRCガイドライン」など、
それぞれのガイドラインの、大事なところは網羅されています。
いざ緊急事態になった時に、とっさに動けるようにするには、日頃から知識を付けシュミレーションをしておくことが大切です。
まずは、このハンドブックの内容をしっかり確認しておきましょう!
これを読んだ機会に、アナフィラキシーや緊急時に記録する紙の場所を把握しておく、蘇生のアルゴリズムを見えるところに掲示しておく…というのも大事ですね!
小児の救命救急について学びたい方は、赤十字の幼児安全法支援員の研修がおすすめです。(参加した感想はこちら)
病児・病後児保育における感染症対策
ここでは、「感染」「感染症」の定義や、主な感染症の説明、感染経路別の対策について書かれています。
特に手洗いが大切なことは強調されています。
また、下痢便おむつの処理方法や、嘔吐物の処理方法、消毒についても詳しく書かれています。
注意が必要な感染症として、
- インフルエンザ
- ノロウイルス
- RSウイルス
- 水痘
- 麻疹
- 風疹
については、感染経路や潜伏期間、症状など細かくまとめられています。
「保育所における感染症ガイドライン」などから引用された内容になっています。
子どもが病気の時の保護者支援
保護者支援については、
「社会全体そして地域みんなで子どもを育くむ」という観点から、親とともに病児、病後児保育施設が、子どもが病気の状態から回復することを促すことは、保護者の養育力を高めることにつながります。
と書かれています。
病児・病後児保育中の子どもを安全に預かることももちろんですが、
保護者に対して、集団保育の当初は感染症になりやすいことや、病気の子どもへの適切な対応を伝えることも大切な役目なんですね。
おわりに
ざっくりですが、ハンドブックの内容、そして病児・病後児保育で学ぶべき内容が伝わったでしょうか??
私もこのハンドブックを改めて読み返してみて、こんなに濃い内容だったんだと驚きました!
初めて保育園看護師になった方や、何を勉強したらよいかわからない…という方は、まずはこのハンドブック読んでみてください!
たくさんある保育所関係のガイドラインの中から、看護師に必要なところがまとめられているので、最初の取っ掛かりにおすすめです。
他の保育園看護師の勉強の内容はこちら↓
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