知っていれば言葉がけが変わる!?「3000万語の格差」の3つのT

成長発達

「3000万語の格差」という本を知っていますか?

一時期SNSで話題だった本で、私は息子が5~6ヶ月の頃に読んだ本でした。

研究の内容なども多く、267pのボリュームで読むのには時間がかかりましたが、子どもへの言葉がけにはすごく大きな影響を与えてくれた本でした。

親の話す言葉って、子どもにとってこんなに影響を与えるものなんだと衝撃でした。


今回は、この本の中から、大事なポイントをお伝えしていきたいと思います。

小さなお子さんを育てている方、保育現場など子どもと関わる仕事をされている方にも知ってほしい内容です。

豊かな言語環境の大切さについて

著者は、シカゴ大学医科大学院・小児外科教授の「ダナ・サスキンド」という方です。

小児人工内耳外科医の著者が、保護者の話し言葉の力について本を書いた経緯は本文中で詳しく述べられています。

赤ちゃんの脳を作る3歳までの時期に、親や保育者が「豊かな言語環境」を作ることがいかに大切かがわかります。


言葉の力って、「国語」だけじゃないですよね。算数をするのも、読解力が必要ですし、人とのコミュニケーションを取るのも「言葉」です。

物事を考えるのは、わざわざ意識はしなくても「言葉」を使って考えていますし、言葉にならないともやもやするということもあります。

保護者が子どもに話す言葉の数、保護者がその言葉をどんな言い方で話すかは、算数、空間的推論、読み書きなどの能力、自分の行動をコントロールする能力、ストレスに対する反応、粘り強さ、倫理観といったさまざまな側面で、その人の可能性がどこまで発揮されるかに影響します。

3000万語の格差 P76

言葉の数や、その言い方は様々な面で子どもに影響してくるんですね。

今は様々な幼児教育などもありますが、まずは子どもと向き合って豊かな言葉で話すことが何より子どものためになるのではないかと思うようになりました。


子どもへの言葉がけを増やした方がいい、というのは色んな所で目にすることが多いと思いますが、実際どうやって言葉を増やす?というのは漠然としたアドバイスになっていることが多いように感じます。

この本では、どんな風に言葉を増やすか、研究データを基に方法が書かれていて、ここまで具体的に書かれている内容は見たことがありませんでした。

豊かな言語環境のために考えられた「3つのT」という考え方に則っていて、ちゃんとエビデンスを持って子どもへの関わりをしたいと考えている方にもおすすめの内容になっています。

「3つのT」とは?

本文中では、このように説明されています。

乳幼児の脳発達にとって最適な環境をつくるため、科学をわかりやすく使いやすいプログラムにしたのが「3つのT」です。

「3つのT」は日常生活の中で自然に、保護者と子どものやりとりを豊かにします。

3000万語の格差 p128

その3つのTは…

  • チューン・イン(Tune In)
  • トーク・モア (Talk More)
  • テイク・ターンズ (Take Tunes)

という3つです。

これを意識するだけで、ワンパターンになりがちだった子どもへの言葉がけのバリエーションが増えたなと私自身感じています。

(ただし、言葉のバリエーションを増やすためには、さりげない会話にも頭を使います。脳トレにもなります。)

①Tune In (チューン・イン)

「Tune In」は子どもが集中していることに保護者も集中する行動のことです。

音を合わせることを「チューニングする」と言いますよね。

子どもに合わせて「Tune In」することが、3つのTを実践する上で、最初に大切なことになります。

子どもはいつだって、自分のしていることに興味を持ってほしいと望んでいます。

子どもの意識があちこち次々変わっても、子どもの注意が向いているものやできごとに保護者がついていき、子どもの働きかけに対して反応を返すことが大切なんだそうです。


そして、まだ言葉を話すことができない赤ちゃんの場合はどうでしょうか。

赤ちゃんは泣いて表現することしかできません。

泣いている時には何かしらのストレスを感じているというサインになります。

赤ちゃんが得体のしれない世界で「安全だ」と思えるようには、赤ちゃんのサインに対して保護者が「反応する」ことが大切なのだそうです。

なんで泣いてるんだろう?と不安になることもあります。

お腹空いたのかな?と授乳してみたけど、泣き止まなくて違ったのかな?と自信をなくしてしまうこともあるかもしれません。

赤ちゃんが泣いていると一緒に泣きたくなる日もあるかもしれませんね。

でも、赤ちゃんが泣いている時に求めている反応でなくても、それが正しくなくても、ママやパパや自分に何かしてくれたという経験の積み重ねで赤ちゃんは安全基地を手に入れることが出来るんです。

赤ちゃんの泣きに反応する、それも一つの「Tune In」なんですね。


このプロセスは「観察⇒解釈⇒行動」で成り立ちます。

まずは、子どもが何に集中しているかを観察するところから始めましょう。

じっくり観察していると、子どもの行動の流れや指さし、単語だけの言葉でも何を訴えたいか少しずつわかるようになってきます。

具体的には?

例えば、子どもに大好きな絵本を勧めるという場面で考えてみましょう。

絵本を勧めてみましたが、子どもは反応せず、積み木をして遊んでいます。

そんな時、「ねえねえ、この絵本いいお話だよ。こっちおいで、読んであげる!」というのはよくあるやりとりかもしれません。

でも、それは「Tune In」できていません。

「Tune In」を意識するならば、子どものしていることに興味を持って、「親も一緒に積み木で遊ぶ」というのが正解です。


大人は興味がないものでも、勧められれば「ちょっとその絵本読んでみてもいいか」と気持ちを切り替えることが出来ます。

しかし、子どもは自分が興味を感じた時だけ集中し続けるという特徴があり、関心を持たなければどんなに良いお話の言葉でも脳発達にほとんど効果がないそうです。

子どもが集中している世界の中で一緒に遊べば、それが5分でも、すぐに子どもの気持ちが移ってしまったとしても、脳の発達には役立ちます。

他のことに気が逸れるとその分無駄なエネルギーを使ってしまうので、子どもの集中していることを大切にしてあげたいものですね。

②Talk More (トーク・モア)

子どもと話す保護者の言葉を増やすことをいいます。ポイントなのは、子どもに向かって言う、ではなく「子どもと話す」というところです。

また、言葉を増やそう、話しかけようと意識するあまり、子どもの集中を妨げることのないように気を付けましょう。

集中して何かをしている時には声をかけず、ふと親の顔を見上げた時に声をかけてあげるといいですね。

具体的には?

どんな風に言葉を増やすか具体的に考えていきましょう。方法は5つあります。

ナレーションをする

育児しながら自分がしている行動の一つひとつを言葉にしてナレーションしてみましょう。

慣れるまでは気恥ずかしい感じもあるかもしれませんが、自分のしていることを言葉にすることで親のしている行動と言葉を結び付けられるようになります。

一つひとつの言葉は語らなければ日常のできごと。言葉にすることで、脳育てとアタッチメント形成に変わる。

という考え方が素敵だなと思いました。

並行トーク

並行トークは「子どもがしていることの実況中継」です。

長い複雑な文章ではなく、子どもと視線を合わせ、今、周りにある物について話すことがポイントだそうです。

「お母さんのお財布を持っているのね。」

「財布、とっても重いでしょ。」

「中に何が入っているか、見てみる?」

「あ、お母さんの鍵を見つけたね。」

「お口には入れないの、ね。鍵は噛まないで。鍵は食べるものじゃないから。」

3000万語の格差 P139

というような言葉がけが「並行トーク」の例になります。

子どもが自分の気持ちを話せるようになるまでは、何がしたいのかわからないこともありますが、子どもの行動を言葉にするという声がけであれば0歳からでも活用できるなと思います。

「こそあど」を除く

「こそあど」というのは「これ」「あれ」「それ」「どれ」などの指示語の頭文字になります。

親しくなればなるほど、「あそこの、あれ取って」とか「これってあれと似てるよね」とか漠然とした言葉でも伝わってしまうので、名詞は省略されがちです。

それを「こそあど」を使わないと意識するだけで、「テーブルの上のテレビのリモコン取ってくれる?」とか「この花は家の庭に咲いてるミニトマトの花と似てるよね」などと一気に言葉が豊かになります。

「こそあど」が便利な時もありますが、子どもにかける言葉や、家族での会話も「こそあど」を使わないことをちょっと意識してみてください。

状況から切り離された言葉 

状況から切り離された言葉というと難しいようですが、簡単に言うと「今ここ(状況の中にある言葉)」ではないことについての話です。

ナレーションや並行トークは「今ここ」の話なので、それよりも高度な思考を使う会話になります。

指さして「あ!」と伝えられる目の前の状況と違い、今ここにないものについて語るには言葉が必要で、3~5歳くらいから「状況から切り離された言葉」を使うようになるといわれています。


身近なところで考えると、子どもと保護者が一緒にしたこと、一緒に遊んだおもちゃ、子どもも知っている誰かの話などがわかりやすいです。

寝かしつけのときなどに、今日子どもと一緒にしたことを語りかけるのもいいかなと思います。

「今日は一緒に散歩に行ったね。いい天気で汗かいたね。昨日気付かなかった花が咲いてたね。鳩が鳴いてるのを一緒に聞いたね」

というように話しながら、私は寝る前に息子との振り返りタイムを作っています。

(今日イライラして、ダメダメ言ってごめんね…と寝る前に反省会することもあります。)

言葉をふくらます 

子どもの言っている内容を穴埋めして言い直すことです。

言葉をふくらますことで、間違いを正すのではなく、より良い言い方をスムーズに伝えることが出来ます。

例えば、子どもが「ねんね」と言ったら、「眠いんだね、もう遅いし、疲れているよね」というように。

「アイス、おいしい」と言えば、「この苺アイスはとてもおいしいね。だけど、すごく冷たい!」というように。

単語には2語返し、2語3語と話せるようになったら短い文章を使って子どもの反応に単語を足していきます。

これが子どもの言葉のスキル育てを助けていきます。

③Take Tunes (テイク・ターンズ)

3つ目の「Take Tunes」は、子どもと交互に会話し、対話のやりとりの中に引きこんでいく方法です。

会話の行ったり来たりを成功させるためには、親と子どもが自主的で積極的に関わることが必要です。

そのためにはここまでにお伝えした、「Tune In」と「Talk More」が大事で、親子のやりとりの究極の部分と言われるそうです。


赤ちゃんの場合はまだ話せないので、会話は難しいかな?と思いますよね。

赤ちゃんのうちは、コミュニケーションの手がかりを読み解き、大人が解釈して応えるというコミュニケーションの行ったり来たりが重要なのだそうです。

言葉だけでなく、しぐさやジェスチャーについても応えてあげることが大切なんですね。


幼児になってくると少しずつ言葉が増えていきます。

「表情とジェスチャー⇒自分で勝手につくった単語⇒単語のようなもの⇒本当の単語」飾られていく、と説明されていて納得しました。

子どもは自己流の言葉で伝えようとすることもありますが、それもまた成長過程なんですね。

ちなみに1歳8か月の息子は自分で勝手につくった単語が色々あり

  • 時計⇒カチタチ!
  • 水道⇒ジャージャ!
  • 踏切⇒カンカン
  • 電車⇒ゴッゴッ!(多分ゴトンゴトンのつもり)
  • トースター⇒パーン!(パンを焼くから?)

など自分の言葉をたくさん持っています。

話し始めたばかりの子どもは、言葉を探すのに時間がかかるので、親が本能的に子どもが応える前に言葉を先取りしてしまうことがあります。

しかし、子どもが自分で単語を探す時間を持つことが「Take Tunes」で会話が続くか、そこで会話が終わるかに関わってくるので、子どもの反応を待つことが重要なのだそうです。

焦らず、急かさず、子どもの言葉を待ちましょう。

具体的には?

子どもへ問いかける時に「何?」という質問では効果が限られるのだそうです。

「このボールは何色?」「牛は何と言った?」というのはすでに知っている単語を思い出すよう促すだけなので、「はい」、「いいえ」で応えられるような質問と同じレベルになってしまいます。

「どうする?」「なぜ?」を使った質問をすることで、うなずきや指さしで応えられないために子どもはたくさんの単語、考え、アイディアで応えることが出来ます。

「なぜ?」という質問から思考のプロセスが始まるのを促し、問題解決スキルにつながっていくのだそうです。

3つのT・実践編

3つのTを合わせて子どもと関わるときの具体例について説明します。

本を読むとき

例えば本を読む時も、ただ最初から最後まで読めばいいというわけではありません。

①「Tune In」まずは、何が子どもの注意を急にひくか、保護者はずっと敏感でいることが大切です。

そして、子どもの注意が変わる向きに従って大人の注意の向きも変えていきます。途中で気が逸れたら、それで中断になってしまってもいいんです。

②「Talk More」物語の中で何が起きているのか、これからどうなっていくのか、できごとが登場人物にどんな影響を与えるかについてたくさん話します。

③「Take Tunes」開かれた質問で、「もし~だったら」と推測させて想像的な考えを求めます。

例えば…

「おかゆから出てる湯気を見てごらん。すっごく熱いんだね。くまちゃんが今おかゆを食べたらどうなると思う?」

「これ、してよかったのかな?」「どうして、してはいけなかったの?」

「Take Tunes」は子どもが絵を指さすたび、本のしかけを開けるたび、ページをめくるたび、質問するたび、問いかけに応えるたびに起きます。


本を読む場面を想像していただけるとわかると思いますが、ほんの数分の出来事でも3つのTを意識した関わりをしようとすると、たくさんの言葉が必要になるんですよね。

絵本の言葉も素敵な言葉がたくさんありますが、それを読むだけでなく、子どもの興味に沿った会話をしていくことで充実した時間を過ごすことが出来ます。

命令ではなく「なぜなら思考」

3つのTの応用編になりますが、命令ではなく「なぜなら思考」というのも意識すると子どもへの関わり方が変わります。

命令は、自己制御(自己コントロール)も脳も育てないと言われています。

「ダメ!」と強く言われると、その場ではやめるかもしれませんが、なぜダメなのか、何がダメだったのかも考えないので、同じことを繰り返してしまいます。

そのため、何か子どもがしてはいけないことをした時には、「なぜなら思考」が大切です。

「ダメダメ」というのではなく、「○○して。なぜなら~だから。」と伝えることで、日々のくり返しが思考プロセスの一部になっていきます。


例えば…ジャムの付いたべたべたの手で子どもが父親の電話を触っている場面です。

「僕の電話、置きなさい!早く!」と言われたら、子どもはびっくりして電話を離すかもしれません。

その時に「僕の電話をテーブルの上に戻して。落とすと壊れるかもしれないから。そうすると、シドニーおばさんが今日、僕たちに電話をしてきてくれたとしても話ができないよ。」と伝えられればいいですね。

子どもは同じことを何度も繰り返しますし、やってほしくないこともたくさんします。

「ダメ」と言いたくなることも多々ありますが、「なぜだめなのか」を伝える努力が大切ですね。

おわりに

絶賛イヤイヤ期の息子と向き合っていて、子どもへの関わり方は奥が深いなと感じる毎日です。

命令しない…など書きましたが私自身出来ていない部分も多く自戒です…。


家で2人きりで過ごすことが多かった0歳の1年間、子どもと何を話したらいいんだろうと迷った時にすごく参考になった本でした。

会話らしい会話が難しい0~1歳のうちから、今回お伝えしたような3つのTを意識することで、言葉が豊かになると思います。

親の心の余裕も試されますが、無理のない範囲で、たくさんの言葉で会話していけたらいいですね。

この地道な日々の声がけが、いつか息子と一緒に楽しく会話できることに繋がるんだと期待して、育児頑張っていきたいと思います。


今回はわかりやすく「親」と書きましたが、保育現場で働いている方にも同じように当てはまる場面が多いと思うので参考になれば嬉しいです。

ここでは書ききれないくらい、たくさんの具体例や意識したいポイントが盛りだくさんなので、気になる方はぜひ手に取ってみてくださいね。

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