今回は、「赤ちゃんはことばをどう学ぶのか」という本を紹介します。
子どものうちに他の言語(英語など)を覚えさせた方がいい、という話はよく聞くと思います。
本当にそうなのでしょうか。子どもはラクラク言葉を覚えているのでしょうか?
この本は、赤ちゃんがどれだけ言語を習得するために努力しているのかということがよくわかる本です。
新書で専門的な内容も多いですが、ユーモアあり読みやすいので、赤ちゃんの「コトバ」について気になっている方におすすめの本です。
赤ちゃんのうちから英語学習した方がいいのかな?と迷っている方にも、ぜひ読んでいただきたい1冊です。
この本を読んだきっかけ
自分の息子が「あーあー」と喃語を話し始めた時、赤ちゃんってどうやって言葉を覚えていくんだろう、という素朴な疑問を持ちました。
今のうちから英語とか聞かせた方がいいのかなーなんて漠然と考えていました。
そんな時にこの本を見かけ、タイトルに惹かれて読んでみました。
内容は後で詳しく書きますが、それはもう想像以上に、赤ちゃんが言葉を習得するのに努力していることがわかりました!!
当時まだしゃべれなかった0歳の息子を見て、まだ今はしゃべれないけど、いつか私たちと話をするために一生懸命頑張っているんだな、
…ということがわかって、すごく嬉しく愛おしくなったのを覚えています。
目次
- 赤ちゃんは本当に「天才」なのか
- まず、聞く
- 「声」から「ことば」へ
- 子どもはあっという間に外国語を覚えるという誤解について
- 必要だから、学ぶ
印象に残ったこと
子どもが言語を習得するのは簡単ではない!!
赤ちゃんは初めての言葉を習得するとき、「言語」とはどういうものなのか、というところからスタートします。
赤ちゃんは、まわりの人が四六時中出している音(声)がそもそも何か、ということから学ばなければなりませんでした。また言語を聴き取るために、音のどんな違いには惑わされてはならず、逆にどの音は聞き分けなければならないか、自分で見つけなければなりませんでした。聴き取った単語がどのような意味か、ということも、試行錯誤しながら見つけ出すしかなかったのです。
たくさんの音を聞いてその中から、この音とこの音はよく繋がっているな…と単語を発見していくそうです。
私たちも全く知らない言語だと、どこが区切りなのか、何が単語なのかもわからないですよね。
同じ言葉でも、違う人が話すと声のニュアンスで聞き取りづらいという経験もあるかもしれません。
赤ちゃんもその状態で、とにかく「聞く」という経験の中から言葉を学んでいきます。
話すまで1年、文が言えるようになるまでさらに1年、そのあとも引き続き学習継続、というのが母語獲得のプロセスです。速くもなく、ラクでもないはずです。
子どもは苦労している様子も見せずに言葉を学んでいくというのは、いつの間にか覚えられるという楽なものでは決してないようです。
周りの大人が子どもの話す様子に興味を持ち、うまくいけば喜んでくれるという環境があるからこそ、
子どもは楽しく言葉を学んでいけるのだとわかりました。
赤ちゃんは「指さし」の意味すら伝わらない
赤ちゃんに言葉を伝えるために、指さしして「イヌだよ」と教えてあげることがあると思います。
でも、7~8か月の子どもでは「指さし」の意味もわからず、その指を見つめてしまうこともあるのだそうです。
指をさした、「その先のモノ」を見てほしい、その先に意味がある、ということすら伝わらないのですね。
9~10カ月頃から、「私とモノ」と「私とあなた」の世界が繋がって、指さしの意味もわかってきます。
そして、1歳前後から単語と意味(モノ)を結び付けていきます。
指さしもまだ十分でない不器用な赤ちゃんでも、周りの働きかけで理解するのを助けてもらって、
単語の意味の学習が始まるということがわかりました。
単語の基本レベルのカテゴリーとは?
リンゴを見て「これは?」と言われたとき、
私たちは「マルイ」とか「クダモノ」ではなく、「リンゴ」と答えるのはどうしてでしょうか?
大人の常識で、モノを見た時に最初に口にする単語は、モノの名前で、さらに「基本レベル」のカテゴリー名を言うというのがあるのだそうです。
上位カテゴリーの「クダモノ」でもなく、下位カテゴリーの「フジ」などでもなく、
多くの人が「リンゴ」と答えるのはそんな暗黙の了解があるんですね。
だから、赤ちゃんが犬だけじゃなくて動物を何でも「ワンワン」と言う…
なんていうこともありますが、それも赤ちゃんが色々試しているのだという考えにすごく納得しました。
大人が無意識に使っているカテゴリーを学ぶ、単語を覚えることですら試行錯誤の連続なんだなと感じました。
(文章を使いこなすには、またそれ以上に努力が必要になってきますね…。)
二つ以上の言語を覚えるのは必要だからこそ
印象的だったのは、ある実験です。
英語環境で育つ9カ月の赤ちゃんに、①中国語のオーディオを聞かせる、②中国語のビデオを見せる、③中国人のお姉さんに遊んでもらう、④中国語に触れさせることはしない
という4つの群に分けて、4週間の実験を行ったそうです。(①~③は全て同じ中国人)
その結果は、③の中国人のお姉さんに遊んでもらったグループのみ、中国語環境の子ども達と同じ聞き分け能力を維持でき、
①のオーディオと②のビデオの群は④の何もしなかった群と同じように聞き分け能力が下がってしまったそうです!
つまり、オーディオやビデオで中国語を見せたり聞かせたりするだけでは効果がなかったということですね。
理由としては、生身のお姉さんとのやりとりは赤ちゃんにとって意味のある状況だった、ということが考えられます。
誰かと楽しくやりとりするために必要な音の聞き分けだからこそ、一所懸命に耳を傾け、音の聞き方を学んでいくのだそうです。
外国語を覚えることについては、たくさんの研究の例が載っています。
3歳から母国語ではない環境の保育園に入って言語を習得していく様子を追跡した研究では、
子どもでも、現地の子どもと同じように言葉を学ぶのはいかに難しいかを知りました。
赤ちゃんは1日24時間かけて1つの言語に集中して母語を獲得していきます。
それがバイリンガル環境となると、それぞれの言語に触れる時間は半分になってしまいます。
少し言葉を学んでから、新しい言語の環境に入るということも大変で、
そこまでに色々努力して、何とか1つの言語を使えるようになってきたところで、また新しい言語について「もう一度初めから自分で使えるようにしなさい」と言われるようなもの
と書かれていて、簡単ではないんだなあと改めて思いました。
結局バイリンガルになるためには2つ以上の言語を学ぶ必要があるという環境(例えば両親がそれぞれ違う言語)ではないとなかなか難しいということがわかりました。
おわりに
英語教育が早まったこともあって、英語は赤ちゃんのうちから、という言葉をたくさん聞くようになりました。
英語に親しみを持たせるということは大切かなと思いますが、
赤ちゃんから始めればバイリンガルのようにぺらぺらになる!というほど簡単なものではないということがよくわかりました。
赤ちゃんが話せるようになる前から、「たくさん聞いて、周りの人と話したいという思いで、言語を習得していく」
というその過程は、見えない努力があってこそなんだなと気付かせてくれた本でした。
子どもは「当たり前にいつか話せるようになる」と思うのと、
「24時間たくさん聞いて努力して言語を獲得する」というのは全然印象が違いますよね。
赤ちゃんの時期からのたゆまぬ努力をしている、そんな子ども達をたくさんほめてあげてくださいね。
中身の濃い本なので、たくさんの人に読んでいただけたら嬉しいです。
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